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2008年07月25日

 ■ ブラックジャックは値引きしない

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ブックオフで見つけました。最近は新書が流行のようです。歯科医が一般向けに本を書くと、最初に批判や歯医者の裏事情から入ることが多いんですが、ここでもやはりありました。ただし、それはちゃんと表紙にも「専門医幻想を捨てきれない歯科医たちに警告」って書いてありますし、内容は共感する点が結構ありました。


タイトルのブラックジャックはもちろん手塚治虫の漫画のことで、スーパーデンティスト、どんな症例でもきれいに治しますよっていう歯医者が増えているけど、それはもちろん大事なことなんだけど、日本の歯科医療事情を考えると、もっと他に目を向けるべきところがあるんじゃないですか、という話です。

確かに、20年くらい前はどの歯科業界誌にも同じ先生ばかりが記事を書かれていましたが、最近は講演を聴きに行くと、いろんな先生が話をしていますし、どれをとってもハズレなく、しっかり治療されている症例を見せていただけます。歯科業界全体のレベルはかなり底上げされているのですが、レベルアップした歯科医師が増えていくことで、どんどん審美歯科やインプラントなどの高度医療が値引き合戦のようになっていてる現実もあるようです。

患者さんにとっては良いことのようですが、そのような高度医療を日本国民全員が必要としているかと言えば、特に超高齢化社会を迎える現代日本においては、増えていく高齢者のうち何%に審美歯科が必要でしょうか?もちろん何歳になっても美しい歯を入れるのは歯科医師の使命ではありますが、寝たきりで困ってる方がいる現状を無視して、動ける元気な方だけの医療を何人も歯科医師が競い合って行う、というのは確かにおかしいといえるかもしれません。

余生をどう生きるか、とかどう死んでいくか、といった問題には、ブラックジャックの技術だけでは通用しないのかもしれません。我々はきっとどんな医療技術を駆使しても治ることが無い機能障害にこれから数多く出会うに違いありません。病気の治し方は講義や教科書で習いますが、決して大学で習わなかった治らない病気の対応に迫られる場面もあるでしょう。伊丹十三監督の「大病人」の中で津川雅彦の演じる医者のセリフに「病気を治すことは教科書で習ったが、放置することは習っていない。どうしたらいいのか怖いんだ。」というのもありました。

先端技術だけではなく、プライマリケアに目を向けていこうと再認識させられた一冊でした。

※表現の足りない点もあるんで、これだけでは医療従事者は異論もあるかもしれませんが、詳しくは本書でご確認ください。

投稿者 fujix : 2008年07月25日 16:04