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2007年08月15日
お盆休み読書シリーズです。船戸与一という下関出身の作家がいます。直木賞、山本周五郎賞を始め、いろんな賞を取っている実力派作家なのですが、個人的にはもっともっと評価されるべきじゃないかと思っている一人です。文庫になっている作品はほとんど全て読みました。キレイな文章を書く方で、ハードボイルドっぽい話ですけど、読みやすいです。別名義でゴルゴ13の原作も書いているそうですが、そうと知らずにそっちもほとんど読んでました。
船戸与一の作品の特徴は「日本社会を逸脱したちょっとアウトローだけど、自分のルールは守るぜ」という日本人が海外で、まるで死ぬために赴任してきたかのように命を懸けて戦うことです。それは制度や社会問題との戦いであったり、自己の内なるものとの戦いであったりします。なぜそこまでして戦うのか、そこには男のロマンがあるのですが、同時に切なさの存在もあります。主人公の一人称での語らいながら、最後に死んでいったりすることも多いです。
で、「夢は荒れ地を」(文春文庫)ですが、カンボジアを舞台に幼児売買のシステムをぶち壊そうとする日本人と、彼を追って日本から来た元同僚の自衛官がカンボジアの腐敗した現実と直面し、それでもカンボジアで戦い続ける話になってます。
日本が国際援助で払ったカネが、使いもしない高額な地雷除去装置に換わり、一部の富裕層のみが潤うが、国全体はまったく成長しない、という皮肉な現実も提示されていて、国際協力の難しさを感じさせられます。勿論小説の中の話ですが、実際にも多かれ少なかれそんな感じではなかろうかと思います。
私はカンボジアには行った事はありませんが、なんとなくアジアの雰囲気が随所によく出てるように思いました。中でも印象深い台詞をメモしておきます。
☆ ☆ ☆
●クメール人には寺が要る。クメール・ルージュは最初の頃宗教そのものを否定していたが、人間はそれなしに生きていけない。これはおれがゲリラだったころずっと考えつづけてたことだ。人間は死後の世界を信じないと、現在じぶんが生きていること自体に意味を見つけられない。
●わたしはね、これまで何度も後悔したことがある。しかし、その後悔の質はどんなものだと思います?何かをすべきときにしなかったことによる後悔。そればかりだった。何かをしたために生じる後悔。一度ぐらいそんな後悔をしてみたい。
●あまりにも長い間影を見ている人間は影そのものになってしまう(現地の諺)
その他船戸与一作品
「龍神町龍神一三番地」「海燕ホテル・ブルー」・・共に日本が舞台の小説。 海燕ホテル・ブルーは「郵便配達は二度ベルを鳴らす」を髣髴させる。
「猛き箱舟」プロレスラーの三沢光晴がこの小説のファンで、プロレス団体に「ノア」という名前をつけました。
「蟹喰い猿フーガ」「夜のオデッセア」・・似た感じの作品で、エンターテイメント色が強く、とっつき易いので最初に読むのにお勧めです。
投稿者 fujix : 2007年08月15日 09:57
