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2006年09月18日
読書の秋シリーズ。新潮文庫の松本清張作品「黒地の絵」より同名の短編を。
舞台は直方市ではなく小倉南区城野です。おそらく現在の陸上自衛隊城野分屯地がそこなんだろうと思いますが、米軍キャンプがあったようです。どこからともなく送られてきて、どこへか知らず去っていく米軍兵隊たちが、1950年のある日事件を起こします。集団脱走した黒人兵が、小倉祇園の喧騒の中、民家に侵入しその家の妻を乱暴するのです。夫は復讐に立ち上がりますが、日本の警察は外国兵に対し無力です。なにもできぬまま翌年の1951年、朝鮮戦争の戦禍が悪化し、大量の米軍の死体が門司港から運ばれてきます。腐乱した死体を処理するのに1体800円が支払われました。
そんな大量の死体から歯型を調べ、台帳の記載と照合して氏名を捜索する役割として歯科医師が登場します。歯科医師が見るのは歯牙のみでしたから、外国人兵隊の刺青は客観的に見ています。外人は刺青の絵柄に鳥類を好んで使います。黒人兵だとカンパスが黒地なので、刺青の原始的な雰囲気が奇妙に感じられます。ここで歯科医師は復讐の心が折れていない夫と偶然に出会うのですが、事件のことは知らされません。そして歯科医師はついに夫が復讐を遂げたあとの黒い死体を目にするのでした・・・。なぜその死体がそんなことになっているかを知らぬままに・・。
対象が死体となりても復讐心は消えず、といったところでしょうが、私がこの話を取り上げたのは歯科医師が出てくるからだけではありません。実は私の祖父はこの話の時期からは遡りますが、この話の近所で歯科医院を開業していました。米軍キャンプに歯牙鑑定に行ったという記録までは残っていませんが、兵器庫の近くで軍人さんたちがたくさん祖父の歯科医院を訪れていたようです。当時の祖父の生活の一部を垣間見たような印象を受けるのです。
投稿者 fujix : 2006年09月18日 10:14
