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2006年09月17日

 ■ 『或る「小倉日記」伝』収録「火の記憶」のN市

台風が接近していますね。旅行に行く予定でしたが断念しました(T-T)
家で暇なんで「読書の秋」にちなんだ話題を。

新潮文庫の松本清張『或る「小倉日記」伝』に収録されている「火の記憶」という短編があります。主人公高村泰雄が、結婚相手に自分の父と母の記憶を、もしや自分の母は他の男と浮気していたのではないか、自分の中には不潔な血が混じっているのではないか、ということを懺悔するように語ります。その記憶というのが「ボタ山に棄てられた炭が自然発火して燃焼している火」の記憶であり、その火を幼い頃の記憶では母親と父親以外の別の男の3人で見た、というのです。

その記憶をたどる際、母の17回忌の際に出てきたハガキの中の「恵良」という名前が珍しいことから九州N市長にお尋ねし、N市を訪れます。おそらく直方市在中の方なら「恵良」さんという苗字の方に数人会ったことがあるでしょうから、N市が直方市を指すことは容易に想像できるでしょう。果たして「筑豊炭田の中心地」であったN市に着くわけです。そこで彼は道すがらに「方々の家から七輪に燃える石炭の青白い煙が流れて靄のように立ちこめ、さすがに炭坑地帯に来たという旅愁」を感じます。

松本清張の作品には筑豊炭田がよく出てきますが、「ボタ山の火」の記憶の糸を辿っていくこれもまた優れた作品です。

☆☆

ところで、この短編、意外な結末を迎えます。探偵役になるのは結婚相手の父親が戸籍上は失踪扱いになっているのを気にしていた女性の兄。高村が記憶している3人の記憶は実は・・・。という逆転、真相は本を手にとってお楽しみください。

投稿者 fujix : 2006年09月17日 09:04