広末涼子主演の映画「ゼロの焦点」がもうすぐ公開されますが、清張作品の映画化はかなり久々です。かつては名作がたくさんありました。もう一度見たいという方へ、松本清張傑作映画がDVD付きの書籍で発売されてます。
第1弾が「砂の器」1974年の野村芳太郎監督の作品です。原作で主人公は、Perfumeより50年くらい早く、「電子音楽」を使っていますね。(すみません、本当はPerfumeなんてよく知りません^^;)丹波哲郎の刑事役もハマってます。
映画のデータベースはこの雑誌に
見たことないのは買おうかな、と楽しみにしてます。
別冊宝島社から「松本清張の世界」が発売されました。著作一覧の他、映画化ドラマ化の全映像化作品データベースを備えた保存版です。
裏表紙に「小説は“いかに書くべきか”ではなく“何を書くべきか”が前提」とあるよう、清張が社会派ミステリーを仕掛けたその背景が時々垣間見れるのが興味深いです。
また、別の単行本ですが「名札のない荷物」という随筆集の中で、「万葉翡翠」という小説を書いた狙いを語る部分があります。曰く、「万葉集にある淳名川という空想上の名詞と、翡翠の出る姫川を小説的にドッキングさせてみたかった」。
小説は特に出来上がった結果が重視される世界だとは思いますが、どういう狙いで、何を表現したかったかというプロセスは、(一般人にはあまり知ることができませんが)重要ではないかと思います。またそれは医療にも当てはまります。
松本清張が生まれて今年が100周年だそうで、昨日はTVドラマ「駅路」やってました。1977年にNHKで向田邦子脚本和田勉演出でドラマ化されていたのをはじめ、何度もドラマ化されている作品です。原作は短めの短編なのですが、向田邦子さんの脚本は流石でした。本屋でも松本清張フェアが開催されています。
私のコレクションも新潮文庫全64冊のうちあと7冊に迫っています。ほとんどが廃刊になった分なので、偶然古本巡りで見つける日を楽しみにしています。
松本清張関係のネタ
清張ミステリーと昭和三十年代」藤井淑禎著
TVドラマ「火の記憶」に出てくる直方市
『或る「小倉日記」伝』収録「火の記憶」のN市
【本の紹介】けものみち 松本清張 新潮文庫
黒地の絵 松本清張
映画「続・Always 三丁目の夕陽」の公開で、昭和30年代がブームになっているみたいです。セブンイレブンに行ったら、駄菓子が当時のデザインで復刻されてたし、雑誌の特集やMOOK本などたくさん出ています。Alwaysの前作では作りかけの東京タワーが印象的でしたが、新作では出来上がってるんでしょうね。昭和45年生まれの藤田です。
30年代の大物の一人に松本清張がいます。それまでの推理小説はトリックに重きを置かれていましたが、清張ミステリーは犯行動機を重視し、「社会派」小説という新たなジャンルを発生させて現代までその潮流はしっかりと受け継がれています。
清張の解説本は数ある中、昭和30年代の世相に絞って清張ミステリーを読み解く興味深い本を見つけました。文春文庫の「清張ミステリーと昭和三十年代」藤井淑禎著です。
例えば、映画館の数がもっとも多かったのは昭和35年なんだそうです。清張ミステリーにも映画館をアリバイに使う作品が多く登場します。「砂の器」では、映画と一緒に放送されるニュースから、犯人へのヒントを得ますが、これは映画の予告編やニュース映画が今よりも重宝されていたことによるものです。SMAPの中居君のドラマではなかなか伝わりづらいことですね。他にも「顔」「薄化粧の男」「紐」「証言」などなど松本清張のたくさんの作品に映画館が登場してきます。
あとは小売店が流通の中心だった頃を描いた「発作」「潜在風景」や、湯治場を舞台にした「誤差」などなど、いろんな考察がありました。もちろん何にも知らなくても松本清張の作品は面白く読めるものが多いのですが、せっかくのS30年代ブーム。当時を想像しながら再読してみたい気分です。ちなみにワタクシ、新潮文庫でナンバリングされている64作品の完全制覇まであと12作品!そのうち7冊は廃刊になってるんですが、古本屋を中心に収集活動中です。今日は中間のブックオフで37番「巨人の磯」を発見しました^^ラッキー!これであと11作品になりました。
小倉城の横にある松本清張記念館http://www.kid.ne.jp/seicho/
もマニア心をくすぐるんで一度は足を運んでみてくださいね。
読書の秋シリーズ。新潮文庫の松本清張作品「黒地の絵」より同名の短編を。
舞台は直方市ではなく小倉南区城野です。おそらく現在の陸上自衛隊城野分屯地がそこなんだろうと思いますが、米軍キャンプがあったようです。どこからともなく送られてきて、どこへか知らず去っていく米軍兵隊たちが、1950年のある日事件を起こします。集団脱走した黒人兵が、小倉祇園の喧騒の中、民家に侵入しその家の妻を乱暴するのです。夫は復讐に立ち上がりますが、日本の警察は外国兵に対し無力です。なにもできぬまま翌年の1951年、朝鮮戦争の戦禍が悪化し、大量の米軍の死体が門司港から運ばれてきます。腐乱した死体を処理するのに1体800円が支払われました。
そんな大量の死体から歯型を調べ、台帳の記載と照合して氏名を捜索する役割として歯科医師が登場します。歯科医師が見るのは歯牙のみでしたから、外国人兵隊の刺青は客観的に見ています。外人は刺青の絵柄に鳥類を好んで使います。黒人兵だとカンパスが黒地なので、刺青の原始的な雰囲気が奇妙に感じられます。ここで歯科医師は復讐の心が折れていない夫と偶然に出会うのですが、事件のことは知らされません。そして歯科医師はついに夫が復讐を遂げたあとの黒い死体を目にするのでした・・・。なぜその死体がそんなことになっているかを知らぬままに・・。
対象が死体となりても復讐心は消えず、といったところでしょうが、私がこの話を取り上げたのは歯科医師が出てくるからだけではありません。実は私の祖父はこの話の時期からは遡りますが、この話の近所で歯科医院を開業していました。米軍キャンプに歯牙鑑定に行ったという記録までは残っていませんが、兵器庫の近くで軍人さんたちがたくさん祖父の歯科医院を訪れていたようです。当時の祖父の生活の一部を垣間見たような印象を受けるのです。
台風が接近していますね。旅行に行く予定でしたが断念しました(T-T)
家で暇なんで「読書の秋」にちなんだ話題を。
新潮文庫の松本清張『或る「小倉日記」伝』に収録されている「火の記憶」という短編があります。主人公高村泰雄が、結婚相手に自分の父と母の記憶を、もしや自分の母は他の男と浮気していたのではないか、自分の中には不潔な血が混じっているのではないか、ということを懺悔するように語ります。その記憶というのが「ボタ山に棄てられた炭が自然発火して燃焼している火」の記憶であり、その火を幼い頃の記憶では母親と父親以外の別の男の3人で見た、というのです。
その記憶をたどる際、母の17回忌の際に出てきたハガキの中の「恵良」という名前が珍しいことから九州N市長にお尋ねし、N市を訪れます。おそらく直方市在中の方なら「恵良」さんという苗字の方に数人会ったことがあるでしょうから、N市が直方市を指すことは容易に想像できるでしょう。果たして「筑豊炭田の中心地」であったN市に着くわけです。そこで彼は道すがらに「方々の家から七輪に燃える石炭の青白い煙が流れて靄のように立ちこめ、さすがに炭坑地帯に来たという旅愁」を感じます。
松本清張の作品には筑豊炭田がよく出てきますが、「ボタ山の火」の記憶の糸を辿っていくこれもまた優れた作品です。
☆☆
ところで、この短編、意外な結末を迎えます。探偵役になるのは結婚相手の父親が戸籍上は失踪扱いになっているのを気にしていた女性の兄。高村が記憶している3人の記憶は実は・・・。という逆転、真相は本を手にとってお楽しみください。